海外支援従事者のひとり言

アジア、アフリカ、中東と緊急人道支援で渡り歩き、合間合間で旅に出る、半ノマド生活を送るパルワナが、海外支援で思うこと、旅の話、世界のこと、日本のことについて独り言ちます。

『国際緊急人道支援のキャリアと仕事』

普段はよく利用する図書館。

緊急事態宣言中は、当然ながら閉まっていたので、

しばらく遠ざかっていた。

 

でも、図書館員はそんな中せっせと働いていたようで、

緊急事態宣言も間もなく解除されるのではないかと思われるような時期に差し掛かったある日、

「予約していた本の準備ができましたので、取りに来てください」とはがき連絡が来た。

何と丁寧な。

 

それから徐々に図書館通いが復活した。

 

まだ書架スペースや閲覧スペースなどは立ち入り禁止で、

予約した本を取りに行き、返却するための往復のみだけれど、

徐々にサービスが戻ってきている。

 

前回行った時には新刊が数十冊、

新刊コーナーに並んでいた。

 

その中で目を引いた一冊。

『国際緊急人道支援のキャリアと仕事』

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へぇ。

手に取ってみると

編集は、上智大学総合人間科学部・小松太郎教授だった。

 

知ってる!

 

人道支援業界は狭い。

災害や紛争などが発生すると、多くの団体が

その国で新しい緊急支援事業を開始しするため、速攻駆けつける。

 

だから、人道支援業界の人々は、

災害のある国から、次の災害被災国へと渡り歩く。

 

アフガニスタン以来また会ったね、とか

イラクではあそこの団体だったけど、南スーダンではこっちの団体で働いてるんだ、とか。

直接の知り合い同士でなくても、共通の知り合いがいる、とか。

以前は別の団体で働いていた知り合いが、

お互い転職して、別の国で同僚になった、なんてこともある。

 

小松先生とはアフガニスタンで初対面だった。

再会したのはアメリカのワシントンDC。

INEE(Inter-agency Network for Education in Emergencies)の

『緊急時の教育支援の最低基準』講師養成講座での再会だった。

小松先生、当時も上智大学の教授だったけれど、

今も大活躍されているようだ。

 

『国際緊急人道支援のキャリアと仕事』は

国際協力・国際機関人材シリーズ3として、

2019年から上智大学で開講した『緊急人道支援講座』の13人の講師の方々の

キャリアと仕事内容を紹介している。

 

この講師陣の半分以上は知っているし、元同僚もいたりするが、

こうやって本の中でそれぞれの思いや考え方をまとめてみることができるのは

興味深い。

 

同書・はじめに、には、

人道支援に関する専門性を有しているにもかかわらず、国内では「ボランティアで好きな人がやっている」といったイメージが未だに続いている。このようなイメージが続いている要因の一つとして緊急人道支援のプロフェッショナルを養成するプログラムが国内にないこともあると考えている(緊急人道支援に関わる国内関係者の多くは海外で修士号を取得している)。

とある。

 

確かに私も、ボランティア、すごいですね、とよく言われる。

確かに、好きだから、やりがいを感じるから、そして自分に適性があると思うからこの仕事を続けているけれど、

 

緊急人道支援

ボランティア精神は大切だけれど、事業管理能力、調整能力をはじめ、

普通の会社と同様、事業を支える総務、財務、広報などや資金調達などの管理業務も必要不可欠だ。

普通の会社と同様、知識と技術、プロフェッショナリズムが求められる。

そして、私も海外修士号取得組だ。

(こちらご参照)

parwana.hatenablog.com

 

そんな、まだまだ清く正しく美しい

赤貧のボランティアというイメージの強い

緊急人道支援業界を垣間見見る第一歩として、

とっても参考となる本だと思う。