仕事柄、中東やヨーロッパに影響力のある
トルコの動向にも注目している。
それで『トルコの現代史』という本を読んでみた。
このような本にはよく日本とその国の関係を書いた章があるけれど、同書にももれなく含まれている。
そしてその「始まりは、エルトゥールル号事件」から。
エルトゥールル号事件、知ってる、知ってる。
映画で見た!
『海難1890』という映画。
日本とトルコの友好125周年記念として
日本とトルコの合作で2015年に公開された。
海外駐在中は出張で頻繁に飛行機に乗っていたので、
かなり映画を見ていた。
この映画を見たのもトルコ航空の飛行機の中。
トルコ航空の機内誌に映画の特集も載っていた。
エルトゥールル事件とは、
トルコ共和国という国がまだ存在せず
オスマン帝国だった時代、1890年に
軍艦エルトゥールル号が
581名が亡くなった事件だ。
自力で陸まで辿り着いた船員数名をみつけた串本町人は
真摯に船員の救助と介護をし、69名の命を救った。
そして、時は巡り1985年。
イラン・イラク戦争勃発時に
イランの首都テヘランに取り残された日本人救出のため、
救援機を出さない日本政府に代わり
トルコ政府が救援機を増便してくれたお陰で
日本人が間一髪でテヘランを脱出することができた。
自国の救援機で退避するのに日本人を優先させることに納得がいかず騒ぎ抗議する人々に対し、
「祖先たちは異国の地で惨事にみまわれた時、救われた。
今、日本人を救えるのはあなたたちだけだ。」
という同国人の声に、
憤っていたトルコ人たちは静かになり
日本人たちの飛行機への搭乗を促し始めた。
ここで映画は終わる。
何と感動的な、因果応報的ストーリーだろう。
元々涙腺の弱い私、飛行機の中ではらはらと感動の涙した。
エルトゥールル号の話も
後半の日本人テヘラン脱出エピソードも
実話に基づいているというところがすごい。
実際に、日本政府のトルコへの日本人脱出支援への感謝の意に
「トルコは日本に恩返しをしなければならないから。」
と答えたそうだ。
こちらも、なんと律義で感動的な返答。
前半のエルトゥールル号沈没と
日本人による被災トルコ人の救助については
トルコの教科書にも載っているらしく、
トルコ人には良く知られた逸話だそうだ。
日本人として、こんな人道的な祖先に胸を張る思いだ。
今では紛争や自然災害の被災者を支援する人道支援って
職業化してしまっているけれど、
昔はそんな職業がなくても
こうやって普通に人助けしてたんだよね。
紛争地で緊急人道支援に長年携わり、
悲しいかな、
争うことは人間の本能で
世界平和なんて永久に不可能!
と思い至ってしまった。
でも同時に、
人には困った人を助けたいという本能も
間違いなく備わっているということを、
このような映画が思い出させてくれる。