海外支援従事者のひとり言

アジア、アフリカ、中東と緊急人道支援で渡り歩き、合間合間で旅に出る、半ノマド生活を送るパルワナが、海外支援で思うこと、旅の話、世界のこと、日本のことについて独り言ちます。

『デジタル・ファシズム』は難民管理にも及んでる

前回、遅ればせながら

『デジタル・ファシズム堤未果著(2021年)を読んでみたと書いた。

 

「難民の行動をデジタル ID で管理する」なんて

小見出しにあるように、

デジタル化は難民にまで広がっている。

 

何と2021年末までに

世界で980万人もの難民が生体認証で

難民登録されているのだそうだ。

 

瞳の虹彩を登録した難民は

世界中どこに行っても追跡が可能となる。

その情報がどのように使われるのか、

プライバシーはどう守られるのかは

UNHCRからの難民への十分な説明はないらしい。

(UNHCRは適切な説明を行っていると言っているけれど。)

 

大きな問題はロヒンギャ難民におこった。

 

ロヒンギャ

ミャンマー西部ラカイン州に居住してきた

ベンガルイスラム教徒の少数民族

100万人以上いると言われる。

ベンガル系は隣国バングラデュのベンガル民族と同民族)

 

ミャンマー政府はロヒンギャを不法移民集団とみなして

国籍を与えず

差別、迫害を行ってきた。

 

2014年に31年ぶりで実施された国勢調査でも

ロヒンギャは民族として認められず

調査対象から外されたという

ひどい扱いだ。

 

(ちなみに、私が駐在していた南東部カレン州には

カレン族が多く住み、キリスト教徒が多い。

ミャンマーには主要8部族135民族がいると言われる。)*1

 

そして、2017年8月以降、

政府の武力弾圧が悪化し、

数十万人ものロヒンギャ

隣国バングラデシュに難民として逃れた。

 

そのロヒンギャ難民に

UNHCRが生体認証で難民登録を行っている。

 

そのデータ、UNHCRはバングラデュ政府に共有し、

バングラ政府はミャンマー政府に渡していたのだそうだ。

 

国にいると命に危険があるから他国へ逃れるのに、

個人情報が守られなかったら、追跡されちゃったら、

命からがら他国に逃げても、命の保証がなくなる!

 

著者に『政府は必ず嘘をつく』という著作があるけれど、

国連だって嘘をつく!と叫びたい。

ひどいじゃない!

 

意図的な情報共有も怖いけれど、情報漏洩も大問題。

 

2022年1月には国際赤十字委員会の

51万もの難民の個人情報が、

正体不明のは正体不明のハッカーからサイバー攻撃を受けて

盗まれたことを発表した。

 

情報セキュリティは万全って言っても、

「絶対」ってやっぱりあり得ないことを

残念ながら証明する事例だ。

 

やっぱり、デジタル化怖い!

 

無料のものには理由(わけ)があるのと同様、

便利なものにも代償がつきものということか。

 

始まってしまったデジタル化による

生体認証による難民管理。

その流れは止められない。

 

そうであれば、

厳重に安全に、難民が被害を被らないよう

データが管理されることを祈るしかない。

 

おっと、人の心配もそうだけれど、

自分の心配もしなければ。

 

『デジタル・ファシズム』のサブタイトルは

ー日本の資産と主権が消えるー

 

世界の中で遅れているとは言われるものの、

日本でも様々な面でデジタル化は進んでいる。

筆者が言うように

「そのデジタルを動かすのはいったい誰なのか」  

という視点を忘れずにいたい。

 

そして、「おかしい」と口に出す

たった一人の声が、

多くの人が絶対に変えられないと思い込んでることを

変えることを忘れずにいたい。


*1:ミャンマーの民族問題について書いた記事、是非読んでみて下さいまし。

parwana.hatenablog.com