海外支援従事者のひとり言

アジア、アフリカ、中東と緊急人道支援で渡り歩き、合間合間で旅に出る、半ノマド生活を送るパルワナが、海外支援で思うこと、旅の話、世界のこと、日本のことについて独り言ちます。

『アフガニスタン 戦火からの再生・希望への架け橋』を読んで ー 人生について、日本人であることについて考えた

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とある勉強会に参加した際、机の上にあったこの本

アフガニスタン 戦火からの再生・希望への架け橋』

NPO法人カレーズの会理事長レシャード・カレッド医師著

 

図書館でも目にして、

私の「読まなきゃリスト」に入っていたので、

この本借りていいですか?って

早速借りた。

 

アフガニスタン

私にとって海外支援デビューの地。

当初はそんな最危険国、最貧国で駐在することを

全くもって計画していなかったのに。

 

そして初駐在地となった特別な国。

 

これで私のキャリア運命、

想定外の方向に転がることになりました。

人生、ほんとに

思った通りに、計画通りにいかない!

 

さて、アフガニスタン派遣が決まって、

出発前に、とっても緊張しながら

いろいろ情報収集している時に

カレッド医師のことを知った。

 

在日アフガニスタン人で

母国アフガニスタンの支援をしている

お医者さんという認識のみで、

深く追わなかった。

 

活動地も彼はアフガン南部のカンダハル

私は東北部バダクシャンで離れているし、

支援分野も彼は医療、私は教育と異なっていたし。

赤丸の上から、私の駐在地バダクシャン州、首都カブール、
カレッド医師のカレーズの会活動地カンダハール

 

それから20年余りの月日が巡り、

今回、カレッド医師の新しい著作を手に取った。

 

本は今年2月に実際現地に足を運んだ際の

視察報告から始まっている。

 

なかなかまとまった情報は得にくく、

現地の様子が分かりにくいので、

写真を交えた現地の報告はとても参考になる。

 

2021年8月にタリバンが政権復権してからの

アフガニスタンの厳しい様子は、

無味乾燥なデータ数値だけでは

余りピンとこないけど、

 

現地の様子を文字で追うと

映像が頭に浮かんでくる。

 

深刻さが辛い。

胸に刺さる。

飢餓と貧困がここまでひどいんだ。。。

 

本を読み進めると、

 

タリバン復権

レシャード医師の生い立ちと歩んできた道

カレーズの会の活動

アフガニスタン近現代史

中村哲医師との交流

の他、

 

中国のアフガニスタン進出についての考察

タリバンとの向き合い方、などなど

おもしろい!

 

心動かされながら、考えさせられながら、

読むのが止まらなかった。

 

そうそう!

1979年のソ連侵攻前は

ヨーロッパからの観光客も多かったし、

 

女性もブルカをかぶらないどころか

ショールもせず

ミニスカートで歩いてたって、

 

懐かしそうに

自分のミニスカート姿の写真を見せながら

アフガン人同僚が言ってたのを思い出した。

 

それが今じゃ最悪の政治経済、治安、人権侵害。。。

アフガニスタン

なんでこうなっちゃったんだろう。。。

 

そして、

なんだかカレッド医師って

日本人以上に日本人ぽいかもしれないと感じた。

 

それって、他の在日外国人からも感じたことがある。

日本が好きで、

日本の歴史、文化・風習を良く知っていて、

古き良き日本の心が染みついている感じ。

 

地元静岡県島田市の人々に愛され、信頼され、

地域医療を推進しながら

アフガニスタン支援にも邁進している。

 

この本を通じて、

またお手本としたい人に出会えたことに感謝。

 

追伸 

私のニックネーム・パルワナは

実はアフガニスタン女子によくある名前なのです。

意味は「蝶」。

「あなたのアフガン名はパルワナよ。」と

前出の元ミニスカートのアフガン同僚に命名されたのでした。

当時はアフガン名で活動するとは

全くもって想定していなかったけれど。

恩師が『VIVANT』に貢献してた!

部屋にテレビないし

あったとしても見ないし。

テレビ番組の情報はほとんど入ってこない。

 

それがお世話になっている方が

『VIVANT』ってドラマが面白いんだよ!と

興奮しながらあらすじを話してくれた。

 

誤送金?

別班??

スパイの話???

 

日本のドラマには余り期待していないので、

騙されたつもりで(スミマセン!)

Tverにアクセスしてみた。

実はTverでテレビ番組見るのも初体験!

 

既にドラマが始まって

5話目ぐらいだったけれど、

Tverで1話目から見ることができた。

 

えー、何これ!!

すごい砂漠!

おお、イスラム教徒だ!

部族対立!

 

国際緊急人道支援従事者の

ツボにはまる、はまる!

 

それからというもの

毎週日曜日が待ち遠しくてしょうがないから、

Vterで同じ話を何回も見たりして。

 

ネットでもVIVANT考察班の考察もいろいろ見てたから、

私のインターネットのお勧めは

VIVANTだらけになっちゃったよ、苦笑。

 

そんなVIVANT愛から、

中東専門家の恩師ととっても久しぶりにお食事した時、

「先生、VIVANTってテレビドラマ知っていますか?」

と振ってみた。

 

舞台となっている架空の国バルカ共和国は、

西のカザフ系イスラム教徒

北のロシア系住民

東のモンゴル系仏教徒

南の中国系住民の

民族対立が元となる内戦で国土が荒れた。

 

テロ組織「テント」のアリは

モスクでお祈りしてたし、

 

乃木さん、野崎さん、薫さん、ドラムが

砂漠を超えてラクダで逃避行をする際も、

アラブの民族衣装っぽい

ムスリムな雰囲気のいでたちだったし。

 

それで、先生に振ってみたのだけれど、

先生、即座に「知らない」と。

あーあ、残念。面白いのにな。

 

「。。。あれ、それって『倍返し』の俳優さんが出てるドラマ?」

 

「ああ! それ、TBSの人から電話がかかってきて、

イスラム関連で間違いがないか確認して欲しいって

依頼されました。」

「だから、ドラマ始まる前に台本見ましたよ、笑」

 

えー!!

そうだったんですか、先生!!

 

先生曰く、

砂漠を逃げる際に頭に巻いている

カフィヤ(アラブのスカーフ)は

パレスチナのだったとか、

細かいところに突っ込みどころあるけれど、

特段の問題はないとのこと。

 

さすが中東専門家の大先生です!

 

宗教と言えば、

ドラムはジャミーンの無事を

チベット仏教仏画に一生懸命祈っていたな。

さすが多民族・多宗教国家バルカ。

TBSさん、細かい!

(実際、モンゴルではチベット仏教が広く信仰されている。)

 

遂に昨日最終回を迎えたけれど、

ハラハラどきどき、

やっぱり最後までVIVANTは裏切らなかった!

 

余韻を残す最終回。

別班の活躍はまだまだ続きそう。

続編、期待してます!

ミャンマーの猫の物語

日本貿易振興機構JETROジェトロ))は

貿易・投資促進と開発途上国研究を通じ、

日本の経済・社会の更なる発展に貢献することを目指している

独立行政法人で、

私も働いてみたいなーと思っていた団体の一つ。

 

残念ながら、今までほとんど全く接点がなかったのだけれど、

最近、ご縁あって

初代ミャンマー事務所長さんと知り合った。

 

私がミャンマーに駐在していたとお伝えしたら

ミャンマーの話で盛り上がった、盛り上がった!

 

私がミャンマー駐在していたのは

2013年から2015年だけど、

 

初代所長さんは

2021年2月のミャンマー軍のクーデターよりも前、

 

2010年11月にアウンサンスーチーさんが

自宅軟禁から解放され、

軍政から民政へ移管が進み

2015年には半世紀ぶりの文民政権が発足、

やっと民主化と経済発展の明るい希望が差し込んだ

もっと前、

 

ミャンマー軍が厳しく国を管理していた軍政の頃、

ジェトロミャンマーに初めて事務所を設置したのだそうだ。

なぜそんな難しい時に?

 

ここら辺のお話、

次にお会いする機会のある時に是非深堀したい!

 

この初代所長さん、

ミャンマーに駐在して以来、

ずっとミャンマーとの関係を維持して

支援をされているとのこと。

一時はミャンマーの民芸品・工芸品などを日本で販売して、

ミャンマー文化を日本に伝えていた。

関わったのが、難しい頃だっただけに

思い入れも人一倍あるんだろうな。

 

感染症蔓延による厳しい渡航制限のため

ミャンマーから仕入れができず、

残念ながら、お店は閉店されたとのこと。

 

で、その初代所長さん、

こんど、ミャンマーの猫の絵本を出版するんです、とつぶやいた。

 

えー、すてき!

 

絵はミャンマー人アーティストが担当、

ストーリーは

共に国際協力に尽力してきた

初代所長さんの奥様が書かれたのだそうだ。

 

タイトルは

『しあわせの まよいねこ』

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パステルカラーの背景に

ピンクのねこちゃんがとってもキュート。

 

2020年のクーデターからの現在の

ミャンマーの軍政下、厳しい状況の中での、

女の子と猫のチッチッとメメのお話。

 

パステルカラーに彩られて

ミャンマーの景色がページいっぱいに広がっている。

 

軍政下のちょっと悲しいお話だからこそ、

ミャンマーと世界の平和と幸せを

絵本の女の子と一緒に祈りたいと思う。

 

それにしても

猫が世界のあちこちで活躍してるにゃん。

イラクでも。

parwana.hatenablog.com



ハロー・キティも世界のあちこちで見かけるし。

ハロー・カティとか、ハロー・キキってな感じで

微妙なキティちゃんもいるけれど、笑。

 

私も見習うにゃん!

頑張ってるガザの若者もいるんです!

おお、アマルちゃんから

すっごい久しぶりにメッセージが届いている!

 

2014年夏、イスラエルによるガザ地区への攻撃で

ガザに甚大な被害が発生した。

 

死亡者2000人以上、負傷者1万人以上、

避難民になった人50万人、

全・半壊した家屋1万8千戸、

何らかの修繕が必要な家屋8万戸以上。。。

 

この被災者への人道支援のためエルサレムに駐在し、

定期的にガザ地区を訪問していた。

 

その時知り合ったアマルちゃん。

 

アマルと言えば、

アマル・クルーニー

レバノン出身の国際弁護士で、

イケメン+セクシー・ハリウッド俳優

ジョージ・クルーニーの奥さん。

 

2人が結婚したってニュースを見た時に、

アマルってアラビア語

「希望」という意味だと知った。

 

同名のガザ地区のアマルちゃんは

日本にも縁のある社会起業家で、

なんと全く関連のないところで

共通の日本人の知り合いがいたことにびっくり!

 

アマルちゃんは2017年、

ジャパン・ガザ・イノベーションチャレンジ』で

準優勝した逸材なのだけれど、

そのアマルちゃんのビジネス・アイディアを

現実化させるメンターとなったのが私の仲良し君、

マックだったんだって!

いやー、ほんとびっくり!

だって彼、

海外支援とかには興味ないんだもん。

 

ガザには

イスラエルからの攻撃の犠牲となり

身体が不自由になった人々が多数いる。

 

アマルちゃんは、重い荷物の移送や

車いす使用者の移動が楽にできるような

キャリアーを考案して、

見事入賞した。

 

もう、マック、私が駐在してること知ってたくせに、

ぜーんぜん知らせてくれなかったぁ!

 

マックも、

自身が難病を抱え

身体的な障害を持ちながらも、

だからこそ、

物理的、心理的な社会バリアを取り払うための

バリアフリーコンサルタントとして大活躍している。

 

それで、アマルちゃんのメンターに

抜擢されたのだそうだ。

 

おっと、アマルちゃんの話でした。

そのアマルちゃんからのメッセージ。

 

現在も社会起業家として

仲間たちとガザで会社を起こしている。

深刻な電力不足にあえぐガザで

電力支援をする会社Switchのために

資金調達に奔走しているとのことだった。

 

立派な動画もできている!

www.youtube.com

 

『天井のない監獄』と呼ばれ、

種子島程度の範囲からの出入りがほとんどできないガザで、

若者の失業率は60%以上にも及ぶと言われているガザで、

私など1,2日滞在しただけで気が滅入ってしまうガザで、

こんな取り組みを行っている若者もいる!

 

少数派かも知れないけれど、

社会に影響の輪を広げていこうと

活動している若者が

確実に存在しているのが嬉しい!

 

だから私も、

そんな現地の活動、様子を日本の皆さんに

発信していきたい。

私ができることをしていきたい!

主目的は何であれ

前回、

日本とパレスチナガザ地区の思いがけない共通点について書いた。

parwana.hatenablog.com

 

日本の将来を担う若者主流派が

日本に絶望して

日本を良くしたいって更々思わない/思えないのであれば、

残念だけど、日本の将来に希望が持てない。。。涙

 

でも、ふと思い出したことがあった。

 

昔、留学中の非営利団体経営の授業で

ちょっとした論争になったことがあった。

 

ミラレパ・ファンド(ミラレパ基金)というチベット難民の人権支援団体があった。

当時とっても人気だったビースティ・ボーイズ

アダム・ヤウクが設立し、

Tibetan Freedom Concertというライブを行っていた。*1

 

大人気のビースティ・ボーイズが力を入れているから、

ファンもチベット人権問題に関心を持ち、

それが流行となる。

 

主目的はビースティ・ボーイズの音楽なのだけれど、

チベットチベット人権問題意識の向上という

副作用が生まれた。

 

『正統派』人道主義クラスメートは

これを邪道と呼んだ。

ファンたちは

チベット人権問題に関心を持っているつもり偽善だと。

 

邪道で偽善者の私は、

主目的は何であれ、

人々が関心を持つきっかけになるなら素晴らしいじゃない派。

副次効果でも社会が良くなるならいいじゃない!

 

実はサンフランシスコで

このミラレパ・ファンドでインターン歴があったので、

授業で邪道扱いされて

熱くなっちゃいました、はは。

 

私だって

インターンするまで全くチベット関心なかったのに、

チベットで何が起こっているか知らなかったのに、

その後、いろいろ調べたり

遂にはチベットに行っちゃったりしたもんね!

 

きっかけがあって、関連が生まれると

他人事ではなくなるんだよねー。

 

日本でも『24時間テレビ』や

UNICEF親善大使の黒柳徹子さんは

「知る」大きなきっかけになる。

さすがテレビや芸能人の影響力!

 

日本の若者に話を戻すと、

だから

彼らが衰退の一路を辿る日本を良くしようと

全くもって思わないにしても、

やっていることが社会に良い影響があるなら、

好循環の輪を広げているのであれば、

それで良しとしよう!

 

。。。って、偉そうにスミマセン。

 

例えば、先日の若者代表君、

日本を良くしようとはこれっぽっちも思っていないけれど、

留学生の日本での就職支援の仕事をしている。

 

日本を良くしようと思ってやっているのではなく、

面白いからやっている、と。

 

少子化の進む日本に優秀な留学生人材が留まり、

日本の経済活動に参加して

経済活性化の一助となるならば、

日本経済に貢献することは確か。

 

若者がみんなこうやって

自分が面白いと思うことをじゃんじゃんやったら、

結果的に日本経済も上向き、

日本社会も活気づきそう。

 

ということで、

やっぱり日本に絶望している若者たちに

期待しないで期待します!

*1:日本でも1999年にコンサート実施。その記事をダライ・ラマ法王日本代表事務所のHPで発見!

www.tibethouse.jp

日本の若者とガザ地区の若者の思いがけない共通点

普段の生活の中で

 20代、30代の若者と呼ばれる世代の人々と

余り接点がないのだけれど、

最近その機会があり、衝撃を受けた。

 

噂には聞いていたけれど、

こんなに日本に絶望感を抱き、

日本に対して無気力感を感じているなんて。

こんなに守りに入っているなんて。

 

日本はもう衰退していくしかないのだから

その現実は受け止めて、

少なくとも自分の周りだけは確実に死守する、と。

日本衰退の悪影響を回避することは不可能だけれど、

できるだけその波が自分に到達するのが

遅く小さくなることに全労力をつぎ込む、と。

 

日本は今こんな状況だから、

日本を良くしたいとか

社会貢献しなきゃとか

そういう気持ちはないらしい。

自分の身を守ることに全精力を注ぐんだって。

それ以外の余力はないんだって。

 

そして、衰退しかない日本の現実を見ると辛いから、

Youtubeや韓流ドラマや投げ銭や、

そんな現実逃避に走るんだって。

 

これって、パレスチナガザ地区で聞いた話に似てる?!

 

2014年のイスラエルの攻撃で被災したガザ地区

パレスチナ人への緊急人道支援事業を実施していた。

 

事務所をエルサレムに構え、

定期的にガザ地区を訪問していたのだけれど、

『天井のない監獄』*1とも呼ばれるガザ地区に行く度、

なぜか気分が塞ぎ込んだ。

まぶしい太陽が燦燦と輝き、地中海が目の前に広がる

一見リゾートなのに。。。

 

若者はお金がないから結婚もできないし、

自殺率も上昇していると聞いた。

 

「一時的に数日訪問する私でさえ気が滅入るのに、

ガザの人々はどうやってこのガザの状況を

受け止めているの?」

 

ガザ地区の現地職員に質問したことがあった。

 

曰く、

現実を直視するのは辛すぎるし、絶望的すぎるから、考えない。と。

これは精神の安定を保つための処世術なんだ、と。

 

心理学的にも

人間には

辛すぎる感情・経験を意識から締め出すために

抑圧という防衛機制が備わっている。

 

今は経済発展著しく勢いのあるインドも

何十年も前は発展途上国と呼ばれ、極貧の人も多かった。

それで精神を病む人も多かったと聞いたし、

現実逃避のために

空想・仮想世界であるボリウッド映画が大人気なんだと

聞いたことがあった。

 

命の危機と隣り合わせのガザと日本を比べるのは

ガザの人々に申し訳ないけれど、

でも、この日本の状況、真面目にまずい!

 

私の周りの限られた範囲では、

若者世代の同僚は

世の中良くしたいって気持ちを

もう少し持っているんだけどなぁ。。。

 

人道支援を志すような人種はもはや例外的?!

 

私、国際緊急人道支援を生業にしているのに拘わらず、

実は日本政府が海外支援に

多額の税金を投入するのには反対している。

 

こんな時は猶更

人の国に多額の支援している場合じゃないんじゃないですか、岸田首相!

って思ってしまう。。。

*1:イスラエルガザ地区から人や物の出入りを厳しく制限していて、ほとんど封鎖状態となっている。ガザの人々は高失業率、貧困状態に直面し、希望を持てない状況が15年も続いている。ガザの気の滅入る状況、こちらご参照下さい。

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その眼科医、タダ者でない!

日本のお役所の住民サービスって素晴らしい。

毎年無料で健康診断が受診できるし、

1年おきに無料もしくはワンコインで

婦人科系検診のお知らせが来る。

各種がん検診だって実施してる。

税金が生かされていて、ありがたい。

 

今年は節目の年で、

更に歯周病検診やら眼科検診のお知らせが来た。

もちろん無料かワンコイン。

 

普段は職場の健康診断を受診しているから、

地元の病院をほとんど知らない。

それで今回、

近所の眼科医院を開拓することにした。

 

地元の病院分かってないと

いざ緊急の時に困るもんね。

 

歯医者さんもそうだけれど

眼科医院も結構あるなぁ。

どの病院がよさそうか

インターネットで口コミをチェックする。

 

「建物は古いけどお医者さんは丁寧で腕は確か」

と評判の良い眼科医院に行ってみることにした。

 

視力検査をしてくれた気さくな看護師さん、

ベテランぽくって安心できる。

 

話の流れで、私が中東に駐在していたと言うと、

そばに座っていた眼科医先生

大きく反応して、

「おお、中東か。シリアの大統領は眼科医なんだよ。

俺と同業者だ、笑。」

なんて言うではないの。

 

えー!?

この眼科医先生、なんでそんなこと知ってるの?!

 

まさにシリアのアサド大統領、

大統領になる前は眼科医だった。

 

2011年に勃発した内戦がまだ終結していないシリア、

世界最大数の650万人もの難民が発生しているシリア、

すっかり忘却の彼方となってしまっているシリアの

大統領が誰かさえ知らない人も多いだろうに。

 

眼科医先生、

「オレ、親が医者で、医者にはなりたくなかったんだけど、

親が医者になれって言うからさ。

だから、医学部に合格したら世界一周させてもらうことを条件に

医学部受けて

それで世界一周に行ったんだよ。

中東にも行ったよ。」

だって!

 

時は1960年代、

世は学生紛争やヒッピーが世を賑わせていた頃。

まだ通貨は固定為替相場制で、1ドル360円の時代。

大卒初任給が1、2万円の時代に何百万円の世界旅行したんだって!!

 

インターネットのないその時代に

訪問国の情報だって入手は難しいだろうに。

現地で言葉はどうしたんだろう。

すごい医者やー!!

 

眼科医先生「君、すごいねー。そんな国で働いてたなんて。」

私「いやいや、その時代に世界一周する先生の方が只者でありません!」

 

眼科医先生に気に入られたようで、

「まあ、今日は暇だから

検診の対象外だけどいろいろ検査してあげるよ。

サービスだ!」

と言って検査してくれた。

ありがたや!

 

お陰様で歳相応に目が元気であることも分かったし、

思いがけず、

眼科医院でアフリカや中東の話で盛り上がり

久しぶりに、マニアックな楽しい時を過ごした。

眼科医院で楽しい時、笑。

 

待っている患者さんは全くいなかったのに、

目に全くの異常もなかったのに、

医院で費やした時間、約一時間、笑。

 

いやー、雑談って楽しいな~。

 

追伸:

銀幕の名作『カサブランカ』で知られた

ロッコの都市カサブランカ

眼科医先生、カサブランカにも訪れたのだそう。

 

カサブランカの名前の由来は、

スペイン語でカーサ(家)、ブランカ(白い)なのだそうだ。

先生、私それ知りませんでした。

さすがです!